本棚を整えた日のこと
本棚を整えた。
長く読んでいなかった本を手に取っては、「これはもういいかな」と箱に入れていく。
少しずつ空いていく棚を見て、胸の中にも風が通るような清々しさがあった。
整った部屋は、まるで心の中まで整ったようで、思わず深呼吸したくなる。
消えた背表紙と、静かな寂しさ
けれど、ふとした瞬間に胸の奥がひやりとした。
あの小説の背表紙も、学生のころに読んで心を支えてくれた詩集も、もうここにはない。
すっきりしたはずなのに、見慣れた色やかたちが消えた棚は、どこか寂しげに見えた。
ものを減らすことで、心の負担が軽くなると思っていた。
でも、ものにはその時々の自分が宿っていたのだと、今になって気づく。
読みかけのまま残っていた本も、あの頃の私の「途中」をそのまま抱えていてくれたのかもしれない。
整えることは、小さな別れ
整えるという行為は、たしかに前を向くための一歩。
けれど、その裏側には「もう戻れない時間」との小さな別れもある。
その寂しさを感じられることは、今を大切に生きている証のような気もする。
本当に必要なものだけを、これから
そして今回の整理は、紙の本を増やさないという自分への約束でもあった。
これからは、本当に必要なものだけを手に取って、心から読みたいと思える一冊とだけ過ごしていきたい。
空いた棚の一段には、新しい物語がそっと入ってくる余白がある。
今日の本棚は少しだけ寂しいけれど、そこには“これからの私”の選択が静かに息づいている。